コロコロアニキ(CLASSROOM) INTERVIEW

カズトモさん(SPAZZMATICS,ex-SIKA SIKA)も交え、コロコロアニキ(CLASSROOM)と一緒に宮崎の喫茶店でお茶をシバキました。

クラハラ: コロコロアニキ(以下「コロアニ」)にとって宮崎はどういう街?

コロアニ: ご飯が美味しいところですねー。

クラハラ: 地鶏やチキン南蛮が有名なイメージはあったけど、きっちょううどんも美味しそうだね。麺がすごく柔らかくて、出汁はいりこが効いてるんだよね。

カズトモ: 実は宮崎はホルモンも美味しいんだよ。次はみんなで美味しいもの食べに行きたいよね。

クラハラ: ホルモンも美味しそうですね―。コロアニの出身は宮崎市?

コロアニ: 出身は宮崎市から離れた都農町ってところです。宮崎市から50キロ先くらい。ヤンキーばっかりの町ですね。 ヤンキーと老人の町。

クラハラ: バンドを始めたのはいつ頃? CINDERELLA BOYSが最初に組んだバンドなのかな?

コロアニ: そうですね。高一の冬ぐらいから同級生と始めました。

クラハラ: それがCINDERELLA BOYS?

コロアニ: そうです。

クラハラ: バンドを始めるのが早かったんだね。自分の身近な友達にはそんなに早くオリジナルのバンドを始めた人っていないかもしれない。その頃からパンクが好きだった?

コロアニ: パンクが好きでしたね。Hi-STANDARDやBEAT CRUSADERSが好きで。CINDERELLA BOYSも最初はメロコア的な要素のあるバンドにしたかったんですけど、音作りがよくわかんなくて・・・。汚いっていうか、整ってないような音になっちゃって。最初はスカパンクっぽい音楽でした。それでメロコアじゃなくて、ちょっとそういう汚い音が好きなバンドのシーンに入ってったって感じですね。

クラハラ: それからCLASSROOMを始めたんだよね。CLASSROOMの結成は何年?

コロアニ: 僕が22歳くらいの頃だったので・・・7年前くらいですかね。CINDERELLA BOYSも後期の方はCLASSROOMみたいな音楽になってて。ハードコア・パンクっぽいというか。MILKとかが好きになって、こういうのやりたいなって。KillerpassとかKiliKiliVillaからの影響もあって、どんどんそういう方向にシフトしていって、CLASSROOMを始めたって感じです。

クラハラ: CLASSROOMはメンバーが宮崎から引っ越しちゃってあんまり活動が出来てないんだよね。コロアニはソロでライブしてみたりする気はないの?例えば弾き語りとか。

コロアニ: やっぱりバンドでのライブが前提で曲を作ってるんで、そこを崩したくはないなっていう気持ちはあります。それに一人でやる技術も特にないんで・・・。前はTRASHってバンドのサポートでベースを弾いたりしてたんですけど、今はそういうのもやってないです。

クラハラ: 宮崎のライブシーンはどんな雰囲気?

コロアニ: 如何せん人が少ないから・・・。DONBLAってバンドのくにやさんと最近仲がいいんですけど、ハードコアも歌ものも変なことやってる人もみんな一緒にやってるって感じです。ごった煮じゃないですけど、絶対数が少ないんでシーンとかはないって感じですかね。いる人たちだけでやってるんで、バンドをやってるってだけで希少な感じ。

クラハラ: コロアニの音楽のルーツはさっきも話してたHi-STANDARDやBEAT CRUSADERS?

コロアニ: そうですね。今もBEAT CRUSADERSが一番好きなんですけど、中学の頃にBEAT CRUSADERSはよくメディアに出てて。ギターボーカルの日高央がCircle JerksのTシャツを着てたりしてて、その頃はCircle Jerksなんて知らなかったから自分で調べて全部聴いてみたりして。Dead Kennedysとかも。Ken YokoyamaもOperation IvyのTシャツを着てたりしてましたよね。
中学生の時にCircle JerksのGroup Sexを買ったら、同じ曲が2回ずつ入ってるんですよ。1曲目から14曲目が終わったらもう1回1曲目から流れ出して・・・なんじゃこりゃって。曲がたくさん入っててお得だなぁって思ったのに・・・。あっそういえば父親は若いころに福岡に住んで時期があったみたいで、めんたいロックをよく聴いてました。THE ROOSTERSのライブとかよく観に行ってたみたいです。

クラハラ: 何か興味があることやこれからやってみたいことはある?

コロアニ: 特にないんですけど・・・。でもたくさん本を読むので、時間もあるしちょっと小説とか書いてみようかなーと。

クラハラ: コロアニは本もたくさん読むんだよね。どんな作品が好きなの?

コロアニ: 保坂和志という小説家がすごい好きなんですけど、何も起こらない内向きな小説っていうか。滝口悠生とか町屋良平とか、そういうのが好きですね。

クラハラ: コロアニが書いたCLASSROOMの歌詞はかっこいいよね。歌詞にはそういった作品からの影響もある?

コロアニ: こういうニュアンスの歌詞を書きたいなーって考えてる時に好きな文庫本をペラっとめくって、歌詞に使いたいなって目に留まったワードをノートにどんどん書いていって、そこからマジカルバナナ的な感じでどんどん歌詞を書いたりしますね。ひとつのワードを小説から拾って、それからガーって書いていく。一旦全部書いたら、そこから無駄な部分は削って、また小説とかを読んで引用してきて・・そういうのが多いです。

クラハラ: 小説は今まで書いたことあったの?

コロアニ: それはないんですけど、すごい長い日記とか書いてて。滝口悠生の『長い一日』っていう小説があって、日記がそのまま小説になったような内容なんですけど、そういうのを書きたいなーって思って。日記の延長線上みたいな。

クラハラ: 今まで日記はウェブで書いてたの?

コロアニ: ずっとnoteとかに書いてて・・・。

クラハラ: そのnoteは今でも読める?

コロアニ: それは恥ずかしいので・・・(笑)

クラハラ: そっか(笑) でもいいね。楽しみ。自分も今さらになって日記とかちゃんと書いとけば良かったなってよく思うんだよね。

カズトモ: 「誰の人生でも絶対に映画に出来る」みたいな言葉を最近SNSで見かけて。めっちゃいい言葉だなって思ったんだけど、誰の投稿だったか全然思い出せないんだよね・・・。

クラハラ: そんなフワっとした話しはやめてください・・・(笑)

コロアニ: そういう雰囲気だと滝口悠生の『ラーメンカレー』って作品がめっちゃ良かったですね。

クラハラ: いいね。自分の場合は別に自分の日常を小説とか映画にしたいってわけではないんだけど、自分が考えてたこととか、政治や社会に怒ってることとか、ちゃんとSNS以外にも書いて残しとけば良かったなって。そんなことを考えつつ、全然書いてないんだけど・・・(笑)

カズトモ: 自分は全然やってこなかったんだけど、妻が子どもの成長の記録をちゃんと書いてて。こんなことがあったね、この日は楽しかったねって、読み返すと自分にとってもそれがすごい宝物で。でもそれって別に子供だからじゃなくて、自分たちにも言えることだと思ってて。自分たちの日常であった忘れたくないなってことも結局いつの間にか忘れちゃったりするじゃん。大事なことも何気ないことも、1日1行でもいいからその日にあったことを書く癖があったらすごい素敵なんだろうなって最近めっちゃ思ってる。でも俺も何も書いてない・・・(笑)

クラハラ: 別にちゃんといいこと書くぞって感じじゃなくていいんですよね。でもそれが一番難しいっていうか・・・。実はこのインタビューサイトを始める前は、自分が関わってるようなシーンにいる色んな人たちが日替わりで日記を書いていくサイトがあったら面白いんじゃないかなっていうアイディアもあったんだけど、結局自分が全然日記を書かないよねっていうことでボツにしちゃったんだよね。

コロアニ: 自分の世界に閉じこもるっていうか・・・なにか新しい自分の目線っていうのがないと日常について書くって難しいですよね。例えば道端に咲いてる花が綺麗だったってことを書こうとしても、視点が変われば色んな書き方があるだろうし。ちょうど1年前の今頃の日記を最近読み返して。その日は公園のベンチに座りながら煙草吸って仕事サボってたんですけど、隣のベンチでおじさんがウクレレの練習してて、それを日記に書いてたんですよ。そのことは日記を読み返さないと忘れてたし、忘れたままだったら例えばそのときのウクレレの音色のこととか、今あのおじさんのウクレレはどれぐらい上達してるんだろうかって想像も出来ないし。だから何でもやっぱり書いて残すべきですよね。歌詞も思いついたらすぐメモに書くようにしてます。

クラハラ: 何でも覚えてたらしんどくなっていくばっかりだけど、でもなんだか大事なことから忘れていってるような気がするんだよね・・・。

コロアニ: 忘れるってこととは少し違うかもしれないですけど、停滞するってことも大事ですよね。『時間のかかる読書』って読んだことありますか?横光利一の『機械』って短編を11年かけて読むって本なんですけど、ネジ工場が舞台の小説で、なんで舞台がネジ工場である必要があったのか、そのネジって何のネジだったのかっていうのをずっと11年かけて分解していって。それも停滞し続けてるから出来るっていうか。ずっと同じことばっかり考え続けるってそういうことも大事だなってなんとなく思いますね。

クラハラ: 小説は完成したらZINEにしたりする?

コロアニ: 試しに好きな出版社に送ってみてもいいかなって思ってますね。こんなこと言っちゃったからホントに書かないとっすね・・・。

クラハラ: いいね。めちゃくちゃ楽しみ!

クラハラ: 最近ハマってることやオススメはありますか?

コロアニ: 本を読むのはずっとライフワークにしてるんですけど、でもそれぐらいですかね。あとはネットのくだらない記事を読んだり。

クラハラ: いまはどんな本を読んでるの?

コロアニ: いまは保坂和志の『いつまでも考える、ひたすら考える』を読んでますね。「考える」ってことについて書いてある本で。その中に書いてあるアメリカのレコード会社がThe Beatlesに触発されて才能のある人間を集めたThe Monkeesを作ったけど、結局The Beatlesには敵わなかったって話しが面白くて。商業的に作られたものでは、リヴァプールでティーンエイジャーの頃に出会ったジョン・レノンとポール・マッカートニーの濃密なコミュニケーションと友情によって生み出された作品には敵わないって話しを読んで、かっけー!って思って。そんなものの見方あるんだって、自分と違う考え方がひとつ外付けで増えるみたいな、そういう本が好きですね。

クラハラ: 他にもおすすめの作品があれば教えて欲しいな。

コロアニ: 今はこの3つがおすすめです!

・田沼朝『いやはや熱海くん』
会話のテンポが気持ちよく、台詞が面白い。感情表現の具体性がすごい。登場人物みんなかわいくて良い。足立くんというキャラクターが特にお気に入りです。今一番好きな漫画です。

・ 乗代雄介『犬馬と鎌ヶ谷大仏』
交通新聞社っていうJRのダイヤ表とかを出版してる会社が創立150周年を記念して出版した『鉄道小説』というアンソロジーに収録されてる短編です。老犬と散歩する小説。これからの季節にぴったりです。読んだ後しばらく切ない気分で過ごせると思います。 

・保坂和志『プレーンソング』
本を読み返すことってあんまりないんですけど、この本は夏が来るたび読んでます。CLASSROOMで同タイトルの曲を書くくらいに好きな本で、終盤の会話だけで数ページ進んでいくところいつ読んでも痺れる…

カズトモ: 自分は長崎出身なんだけど、コロアニは宮崎から出ようと思ったりしたことはないの?

コロアニ: 割と旅行に行くのも苦手で。知らないところで一泊するのも嫌だし・・・。そもそも慣れ親しんだ土地じゃないと生活出来ないと思うし。だから宮崎から上京する人とか、信じらんねーって思ってて。俺からするとですけど。あるものだけで何とかしようってマインドで29年間やってきたし。

クラハラ: 宮崎から上京するバンドは結構いるよね。

コロアニ: そうですね。それで大成するバンドも中にはいます。

カズトモ: それは消極的な感じで宮崎に留まるのではなくて、宮崎にも刺激や面白いものは十分あるよねっていう考え?

コロアニ: 宮崎は遊ぶとこもないので・・・正直引っ越すのもめんどくさいって感じですよね。 でもいろいろ長くやってたら、今日2人が来てくれたみたいに友達が遊びに来てくれたりもするし、逆に俺の方から遊びに行くこともあるから、それで満足っていうか。一人の時間も確保したいし。都会に行ってそれが確保できるのかっていう不安もあって・・・。消極的な部分が大きいかもしれないです。

カズトモ: 気になってる場所とかはない?行きたいとことか、何が起きてるのか見てみたいとか。何も知らないから行ってみたいとか。

コロアニ: 鎌倉には行ってみたいですね。 観光で。保坂和志の『季節の記憶』って小説の舞台が鎌倉で。保坂さんも幼少期を鎌倉で過ごされてて、海の近くで暮らす時間の流れ方が書かれているような小説なので、本当にそんな感じなのかなーって気になってて。行ってみたいな。

カズトモ: 宮崎も海の近くだよね?

コロアニ: 宮崎の海はもっと刺激的というか・・・ビーチって感じですね。
実は明日から旅行で沖縄に行くんですよ。でもちょうど台風が来てるみたいで・・・。

クラハラ: 気をつけてね・・・。

コロアニ: ニュースでは「大型で猛烈な台風」とか「大型のトラックが横転する程の強風」って言ってて・・・。もうなるようにしかならないですよね。気をつけて行ってきます。

※翌日、宮崎空港の誘導路で戦時中に米軍が投下したとみられる不発弾が爆発。コロアニは沖縄に行けなかった。

行先が沖縄だったということもあり、戦争がのこした傷跡、現在進行形で進む米軍基地の辺野古移設強行など、様々な問題が頭に浮かぶ。

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