デュビア80000cc INTERVIEW

2021年に4JC RECORDSより1stアルバム『Apka nam kya hai?』をリリース後、コンピレーション作品『MITOHOS V』や『MUSIC FOR TOURISTS – A Passport for Alternative Japan』にも参加し、熊本NAVAROを中心に圧倒的なライブパフォーマンスを続けてきたデュビア80000cc。
『HOWL COMPILATION 1』への収録曲の公開レコーディングがNAVAROで行われた2日後、辻(vo)、太一(gt)、NORI(ba)、遠山(dr)のメンバー4人に集まってもらいました。
本インタビューは1stアルバムリリース後のお話しが中心です。

クラハラ: 一昨日は公開レコーディングお疲れ様でした。いまは2ndアルバムの制作も進めてるんだよね?

辻:そうですね。2ndは秋ぐらいに出せたらいいかなって感じです。録音は終わってるので、残りの作業のスケジュール次第かなーと。

クラハラ:2ndアルバムには何曲ぐらい収録するの?

太一: 8曲ですね。

クラハラ: デュビア80000cc(以下「デュビア」)の曲数って全部でどれくらいあるの? 結構多いよね。

辻: そうですね・・・。いまは20曲ちょっとくらいですかね。

遠山 : 辻が(曲を作る)ペース早いですよね。

辻: 地蔵(石頭地蔵)の次くらいに、じゃないですかね。

クラハラ: 地蔵もかなりペース早いもんね。
1stアルバムまでは、曲を作るときは辻君がまずデモを作って~って流れだったんだよね?それから作曲の方法に何か変化はあった?

辻: いや、あんまり変わってないような気がします。細かいところは変わったりしてると思うんですけど。スムーズになったというか。音楽的な用語というか、拍とか小節の感覚をだんだんメンバーが理解してくれるようになったっていうのもあって、スムーズに曲をスタジオで形に出来るようになっているんじゃないかなとは思ってます。

太一: 以前に比べて辻が曲を作るペースも早くなってると思うんですけど、辻も100%の状態まで作ってこっちに投げてたデモを今は70%くらいでも投げてくるようになった気がしますね。彼の中で全パート出来てなくても、それでとりあえず合わせてみて、それからみんなでアイディアを出し合うみたいなことが出来るようになったのかなと思います。

辻: それが一番大きいというか。1stのときまでは自分がデモを作ってメンバーに共有する段階で既に全体が出来ている状態だったんですけど、それが3年前くらいから完成度は50%くらいでも一旦みんなに共有するみたいなことになってて。残りはスタジオで肉付けしたり削ったりしていくっていうスタイルになりましたね。それが大きいかなって感じですね。変化として。前は100%のところまで自分が作ろうとしすぎて時間がかかってたところがあったんですけど、それだと詰まっちゃうこともあって。そうなる前に、一人で考えすぎるよりはみんなで考えるようにしていこうというマインドになった感じです。

クラハラ: 音楽性についてはどうかな?自分はデュビアのライブを観てて、よりクラブカルチャーからの影響も強くなってるのかなって勝手に思ってたりするんだけど・・・。

一同: う~ん・・・。

遠山: 1stをリリースした後からクラブイベントにもよく誘われるようになって。

NORI: DJから自分たちのライブを始めなくちゃいけなかったり、逆に自分たちがDJに繋がなくちゃいけなかったり。そういう機会が増えると、作る曲もそういうことを意識した感じになるのかなと。もしかしたら(曲を作る)辻はそこまで意識してないかも知れないけど・・・。

クラハラ: 辻君はどう?

辻: 曲の繋ぎや演者同士の繋ぎとかも考えたりするようになって。この曲に繋げるためにこういう曲を作ったらいい感じに繋がりそうだなってライブ全体に足りないものを考えて、それを補うようなテーマの曲を作るというのもあるような気がします。でもクラブミュージック以外でもやりたい曲のコンセプトやテーマは色々あったりして、そのタイミングで挑戦してみたいものやジャンルを形にしているという感じです。最近は今まではちょっと手が届かなかったようなジャンルもやろうとしている傾向があるのかなという感じです。


クラハラ: メンバー全員が社会人になったのは今年からだよね。

遠山: 僕は就職して福岡に引っ越したので、練習はやりづらくなったのかなと。

辻: 平日に練習が出来なくなりましたね。

クラハラ: ストレスは増えたりしてない?

遠山: 距離的に言えば家は遠くなったんですけど、移動時間はそんなに変わってないんですよね。実家に住んでた頃と。特にストレスは感じないです。練習の時間帯とかスタジオ代もみんな気を使ってくれるし。

クラハラ: 辻君はどう?

辻: 社会人になって、学生の時よりも曲を作る時間が増えました。

クラハラ: 増えたんだ。

辻: 学生の頃は大学院で研究をしてたんですけど、その研究っていうのが(自分の中で)一番優先順位が高いタスクで。しかも2年間かけてやらないといけない。だから曲を作ってる時も、常に研究しないといけないなっていう、何ですかね、ちょっと罪悪感ではないですけど、常に研究のプレッシャーがある状態でやってたので。
けど社会人になったら、仕事とプライベートがはっきり分かれるようになった。平日は仕事をして、休日は用事が何もなければ曲を作ったりする、みたいなラインをひくことができるようになって。シンプルに曲作りに取り組む時間が増えたという感じですね。



クラハラ: デュビアは自主企画「八幡市」も継続的に開催してるよね。前回はDJタイムを長めに設定したりしてた。

遠山: 毎回違う感じでやってるよね。前回はDJタイムが長めだったけど、逆にバンドの演奏がノンストップで続いた回もあったし。いろんな挑戦をしたいというか。 試行錯誤というか。 今これやったら面白いだろうなってアイディアをやりたい。

辻: 熊本の人やNAVAROによく来るお客さんにデュビアならではのゲストバンドやブッキングを体験をしてもらいたいなと思いつつ、自分たちも楽しめたらいいなという感じですかね。

太一: コンセプトみたいなのはないよね。誰かのリリースツアーで企画を組むこともあるし、僕らでゲストを呼ぶこともある。でも、もっとコンスタントにやりたいなと思ってます。企画をやるぞっていうハードルをもうちょっと下げてもいいかなと。

遠山: おみラプ(熊本NAVROでHideawayが主催しているイベント)くらいのペースで。フードの提供もしてみたりとか。

辻: うちらはまだおみラプに呼んでもらったことない。

太一: メンバーはみんな仲良い人が少しずつ違ったりもするので、色んなバンドと一緒にやれるっていうのはあるなと思います。企画に限らず色んなライブに出るときも、どんな組み合わせでもやれるなって個人的には思ってます。

クラハラ: オルタナシーンでもクラブシーンでも、色んなイベントにハマるのはデュビアの特徴の一つだよね。


クラハラ: コロナ禍が始まったのはみんなが大学2年生のタイミングだったよね。コロナ禍が始まって、どんなことを考えてた?

辻: バンドがライブを始めたばっかりのタイミングで、NAVAROから誘ってもらった楽しみなブッキングのライブが流れちゃったりして・・・左右や石頭地蔵も出る予定のイベントだったんですけど。バンドでもっとガンガン練習しないといけないなというところでライブがなくなったりしたんですが、それでもZoomでミーティングを開いたりして、会えないなりにコミュニケーションを取ろうとしてたという感じですね。曲も定期的に作ったりはしてたので、練習して曲作ってライブっていうのは意識は変わらなかったですけど。

太一: 2019年からバンドがスタートして、本格的にライブを始めたのは2020年から。なのでコロナ以前と以降のギャップみたいなものは自分の中で本当になくて。最初からそれ(コロナ禍での活動)がスタンダードだったというか。ライブハウスに頻繁に出演するようになった時は、イベントの入場や時間の制限があったりして、それこそ1stアルバムのリリースイベントもお酒の提供が出来なくて21時までだったりとか。そういう感染対策が前提になっている状況がずっと続いていたけど、そこにネガティブな気持ちは正直あんまりなくて。
そういう状況の中でNAVROでちょくちょくライブをさせてもらうようになって、初めての自主企画もその年にやったりして、僕は全然ぐんぐん前に進んでいるなという感覚ではありました。バンドを始めてめっちゃ楽しいみたいな。だから止まっちゃったなみたいな感覚はなかったですね。

クラハラ: 感染対策しながらライブやイベントを続けてたけど、自分はネガティブな気持ちのほうが強かったかも・・・。

遠山: その時期はNAVROがよくライブの配信をしていたので、それまではそんなにNAVROにライブを観に行ってたわけじゃなかったんですけど、Youtubeの配信で気軽に色んな人のライブを観れた。それで自分にとって色々と吸収出来たところはあった。

NORI: 学校も登校減ったし、サークルのイベントが減ったりとか、バンド以外でストップしたことが多くて・・・。アルバイトも自分は飲食店だったんで、シフトに入れないみたいな。もうそれはバンドに時間かけるよねっていう状況だったから。自分で曲を作ったりしてた。



クラハラ: バンドでも個人でも、これからやってみたいことや興味のあることはある?

一同: ・・・・・・・・・。

辻: 物販でトレーディングカードを・・・。

クラハラ: トレーディングカード?

辻: これまで物販は音源とTシャツぐらいしかなかったんですけど、メンバーをキャラクターにしたトレーディングカードを作りたいなと思っていて。QRコードもつけて、読み込むとレアな音源が聴けるみたいな機能もつけたいなと。

遠山: 嵐がファンクラブ限定でスマホにかざしたら音源が聴けるトレカを作ってて。

クラハラ: QRコードがついてるわけじゃなくて?

遠山: QRコードじゃなくて、もうカードをスマホにかざすだけで(聴ける)。
ちょうどアナログなものが流行っている時期だったので、逆にこういう先に行ってるものが面白いんじゃないかと思って提案したんですけど・・・。

クラハラ: 遠山君の提案なんだ(笑) じゃあそれは別にトレカがいいっていうわけじゃなくて、アナログなものとは違う何かってこと?

遠山: ここからトレカに繋がるんですけど、ただのカードだとアレだから柄をメンバーの写真とかにして4種類くらい作って、それに音源をつけて物販に置いて。それで誰の写真のトレカが減りが多いとか比べたりして・・・。人気度とか、可視化したいので。

クラハラ: 可視化したいんだ・・・(笑)

太一: 自信すごいんだね・・・。

NORI: 自分もグッズは色々作れたらなって。服とか結構好きなんで、自分が好きで着れるグッズがあればいいかなって。バケットとか。Tシャツにいいボディ使ったり。いつか出来たらなって思います。

太一: 僕は他にもバンドを2つやってて、他のバンドにも共通することなんですけど、先輩軸じゃない動き方をしていきたいというか。友達とよく話していることなんですけど、(自分たちが)今の状態のまま熊本で活動してる先輩たちがいなくなったら、おそらくArt Blakey Fes(Doit Scienceを中心に熊本NAVAROで開催されているフェスイベント)みたいなイベントは出来ないなと思ってて。もちろん先輩と仲良いバンドが熊本に来て、イベントとかに一緒に出させてもらうっていうのはすごく楽しいし、光栄なことなんですけど、それだけでやっていくのはちょっと厳しいなと思ってて。だからさっき辻が言ってたように、デュビアならでのブッキングや企画を続けていくことが大事なのかなと思ってます。
個人的に思ってるのが、県外からツアーバンドが来て、企画をやったり対バンしたり、それで仲良くなったりして・・・それってマジで素晴らしいことだし、最高じゃないですか。でもそれがこれからルーティーンみたいになっちゃって、何十年も続けていくのは多分飽きちゃうなと思ってて。正直ちょっともう飽きてきてるというか。だから、そうならないようなやり方を考えないとなって思ってます。そういうことが僕たちの企画で出来たら最高です。

クラハラ: すごくいい話しを聞けた。

遠山: もう一回フジロックに挑戦したいかな。

太一: えー。

クラハラ: えっ応募したことあったの?

辻: 昔、ジュンさん(NAVARO、4JC RECORDS、trialerror)が勝手に応募したことがあって。
落ちたんですけど。

クラハラ: 何年のはなし?

辻: 2021年? 1stをリリースした年だった気がする。

クラハラ: 全然知らなかった。遠山君はもう一回チャレンジしたいんだ?

遠山: そうですね。僕はちょっと憧れがある。

太一: (憧れが)もちろんないわけじゃない。出れるなら出たい。

遠山: 上は目指していきたい。

クラハラ: みんなもそうなの?

NORI: 出れるなら・・・。

太一: 能動的に取り組みはしないですけど・・・。まあ、オファーされたら考えます(笑)
そういえば、出てみたいフェスの話し最近したよね?

クラハラ: そうなんだ。たとえば?

太一: ボロフェスタとか?

辻: 先輩や知り合いが出演したことがあるイベントには憧れみたいな気持ちはちょっとありますね。



クラハラ: 何か最近ハマってるものとか、おすすめはある?

辻: 自分はエヴァンゲリオンですね。

クラハラ: えっ!?

辻: 今はもうエヴァンゲリオン。周期的に自分の中でブームがくるんですけど。新劇場版じゃなくて旧劇場版。97年の。あの映画すごく好きなんですよ。作画もすごいし、精神の描写とかもすごいので。あと声優さんの演技もすごくて。やっぱり何回も見返しちゃうなって。

クラハラ: よく見返してるの?

辻: そうですね。去年も見た気がします。

クラハラ: 新劇場版はそうでもないんだ?

辻: 新劇場版は『破』まではすごく好きだったんですけど・・・。『Q』からはあんまり。一応全部見ましたけど。旧劇場版は超えられなかったなって。

クラハラ: 好きなキャラとかいるの?

辻: 伊吹マヤですかね。オペレーターの。

クラハラ: そっか・・・。

太一: 自分は最近買った音源だとArcadian Starshipの『No Feelings (7inch)』とTHE SHITMSの『magical effect』。その他だと、双子山部屋のyoutubeチャンネルですね。 相撲の。これにバンド界隈でハマってるのはナオトさん(kinderwalls)しかまだ会ったことない。ナオトさんとは年に2回ぐらいしか会わないので、この話しができる人が他にも欲しい。



クラハラ: 印象に残ってるライブはある?

太一: 僕はやっぱり昨年末(2023年)のPANICSMILEとの2マンですね。全てを回収したというか。これ難しいな、言い方・・・。1stをリリースする直前に辻とPANICSMILEのライブをUTEROに見に行ったんですよ。ナルコレプシンとの2マン。その時の衝撃がすごい大きくて。個人的にナカニシさん(PANICSMILE、IRIKO、non-commital)とも仲良くさせてもらってて、プレイスタイルにも影響を受けてるんで、地元でPANICSMILEとの2マンっていうのは、ついに来たなって感じがありましたね。

辻: ある種の集大成というか。

遠山: 2022年の「八幡市 vol.3」。PANICSMILEとgn8mykittenがゲストのやつ。バンドとラッパーのライブを交互にどんどんやってもらって。gn8mykittenのライブが終わったらPANICSMILEの演奏がいきなり始まるみたいな。またやりたい。

NORI: 最近だと2024年3月のMUSIC FROM THE MARSのリリースツアーは楽しく演奏できたな。お客さんも結構盛り上がってくれてるのが分かったし。楽しく演奏するために、バンドしてるっていうところもあるんで。
あとBellbottom From 80’sは大好き。尊敬するプレイヤーの話になっちゃうんですけど、Bellbottom From 80’sのトシキさんは、やっぱなんかめっちゃすげーってなってますね、俺の中では。演奏もストイックでかっこいいし、音もかっこいいし。人柄もね、いいお兄ちゃんって感じで。

クラハラ: 他に今まで観たバンドではどうかな?

遠山: 少し前に高松TOONICEに行ったときに観たHow to draw A castle。

太一: 確かに。衝撃受けた。

辻: goatですかね。

NORI: 圧倒的だったのは是巨人とか。

辻: ケバブジョンソンとおとぼけビ~バ~も。

太一: ケバブジョンソンとnontroppoと僕らでやったことあるんですよ。あれヤバかったっすね。他には最近だとRupurizとか。

NORI: cro-magnonも。

遠山: gn8mykittenも衝撃的だった。

太一: キリないね、この話し。


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[PROFILE]
コロナ禍直前の2019年、熊本大学ロック研究会で出会った4人によって結成される。幾多のライブで鍛え上げられた柔剛あわせ持つグルーヴとナード感滲む脱力フロウを武器に、アヴァンギャルドでプログレッシブな音像をダンサブルに響かせる様はまさに唯一無比。また、通常のライブイベントだけでなくHip Hopやハウス/テクノなどクラブイベントでのライブも多く、その圧倒的なパフォーマンスは往年のロックファンから生粋のクラバーまで全てのミュージックラヴァーを虜にしフロアを轟かす。